最新研究を一元化して集める
脳科学や心理学に関する最新情報は、実のところネット上で結構飛び交っています。が、正直なところピンキリが激しく、中には誤解を招く表現が多いのは、前回のプレスリリースの記事で紹介した通りです。
そこで今回は、筆者が愛用している情報源や、その集約の仕方について紹介しようと思います。
今回の記事は一般向けというよりは、学部生や院生、研究者の方(これはご自身の方法論があるかと思いますが)など、ある程度専門的に情報を収集したい方向けになるかもしれませんが、ご了承くださいませ。
国際誌の最新記事・ダイジェスト
国際的な論文雑誌の多くは、RSSフィードを出しています。
これらをまとめてRSSで管理するだけでも、かなり新着話題についていけると思います(全部読めるとは言ってない)。
おなじみNature。科学雑誌の最高峰です。脳科学や心理学・神経科学の専門論文ほどみっちり掲載されているわけではないですが、掲載される論文の質はピカイチです。
こちらはNatureの中でも脳神経科学に特化した雑誌。トップイシューはまずここに載って、そこから細かな研究がいろいろな雑誌に載っていくイメージです。
Natureシリーズ。脳科学・神経科学の中でも、レビュー論文(ある話題について、情報を網羅する論文)中心に掲載される文献です。初めて学ぶ話題や、最近の動向などを知るためにはこちら。
米国最大の神経科学学会、Society for Neuroscience(通称SfN)が発行する神経科学専門のジャーナル。実証的な研究に関しては、こちらに載っていることが多いです。
「科学」を冠する巨大雑誌。後述のEureka Alertも扱うAAASが発行。神経科学以外の話題も当然多いですが、論文の質は最高峰(Nature, Science, Cell が生命科学の3大雑誌といわれる)
米国科学アカデミー発行の雑誌(通称プロナス、しかし日本でしか通じない)。自然科学の全領域が中心(社会科学なども投稿される)で、図説が非常に丁寧な論文が多い印象。
論文集約サービス
キーワードを入力しておくと、キーワードに引っかかった新着論文を自動的に集約、毎日速報を送ってくれるサービス。こんな感じで、気になったワードをいちいち検索しなくとも、ざっと見渡すことができます。
英語の科学専門ニュース
Eureka Alert
ScienceのAAAS社が発行しているウェブニュースサイト。脳科学・心理学に限らず様々なジャンルの最新情報が見られます。
Psychology Today
2ヶ月に一回発行されている科学雑誌のウェブ版。ほか二つと違い、心理学的なかっちりした話題も取り上げられるため、筆者は特に愛用しています。反面、脳科学的な話題は少なめかも。
Scientific American
世界最古の科学雑誌のウェブ版。新しくややこしい研究も積極的に紹介してくれる印象です。
論文検索サービス
英語で調べるならまずはこれ。文献の被引用件数順表示や、研究者ごとのデータベースにアクセスしやすく手軽。
生命科学系ならダントツの網羅性。
エルゼビア社の文献が中心ですが、そもそもエルゼビア社の文献が膨大な数なので。書籍などの情報にリーチしやすいのが利点です。
日本語なら。
日本語の論文ニュース
小嶋祥三先生(元慶應義塾大学文学部教授)による論文レビュー。予測符号化やニューロフィードバックなど、最近のテーマに関する莫大なレビューをされております。
吉田正俊先生(生理研)による研究の近況。視覚サリエンシーや自由エネルギー原理など、視覚的意識に迫る研究をされております。
NPO法人AASJのホームページに掲載されている、最新の生命科学論文の解説記事です。
けんゆー先生(山口大学博士課程)による脳波・カオス研究の近況報告など。python実装の具体的な方法など、現役の研究者向けの情報もあります。
おまけ:とはいえ専門書も大事
論文から読んで理解できることはまずないので、分野をじっくり学べる専門書や、専門書に入る前の入門書も大事です。
・心理学分野
臨床心理学 (New Liberal Arts Selection)
ちょっと分厚いですが、臨床心理学(精神疾患に関わる心理状態を科学する学問)の分野が網羅されており、筆者もよく引いています。
・脳科学分野(入門)
メカ屋のための脳科学入門-脳をリバースエンジニアリングする-
何度も紹介していますが、やはり入門書としては一番良いものです。
ちょっと知識を深めたい方は、最新の知見が詰まっている「続」の方をどうぞ。