電脳の中の脳──脳科学・メンタルヘルスの最新研究やデバイス

脳科学やメンタルヘルスの最前線を、研究者・当事者目線からお伝え。生きづらさを解消するためのプロダクトの紹介も。

AIの画像診断精度は人間の医師の精度に並んだ

AI(人工知能)分野の隆盛は、脳科学メンタルヘルスと並び、研究業界でも目覚ましいものです。毎年16000件以上の論文が査読にかけられ、一般のプレスリリースまで含めるともはや数えることができないほどです。

人工知能, 脳, 思う, コントロール, コンピューター科学, 電気工学, 技術, 開発者, コンピューター

AI技術の応用先は画像認識や音声認識、自動翻訳や自動運転など様々ですが、今回は画像認識の分野についてです。医療分野において画像は診断の最も重要な情報源の1つですが、この画像を用いた診断精度において、AIが人間の医師を超えたという分析が登場しました。

あらゆるディープラーニング研究を網羅したメタ分析

今回紹介する研究では、医療画像に対しディープラーニングで診断を行う複数の研究をレビュー・メタ分析しています。The Lancet Digital Health誌に掲載されたこの研究では、2012年1月1日(AlexNetと呼ばれる、ブレイクスルーを起こした画像認識モデルの登場年)から2019年6月6日(分析開始)までに公開されたあらゆる言語の研究を用いました。ここでいう研究は Ovid-MEDLINE, Embase, Science Ciation Index, Conference Proceedings Ciation Index, 及びPubMedからの検索によりアクセス可能なものを指します。

 

このように、複数研究の比較をする際には、複数の論文検索システムや論文雑誌を横断して調査することが不可欠になります。

julife.hateblo.jp

AIは87%, 人間の医師は86.4%の診断精度で、AIは人間についに並んだ

研究では、31587の論文から適正なものが82本選ばれ系統的レビューを行われました。これらの研究は、眼の病気やがん、呼吸器疾患、外傷など複数の疾患に対する画像診断が含まれていました。また、十分なデータが公開されている25の研究は、更に詳細にメタ分析が行われました。

医療, 予定, 医師, ヘルスケア, クリニック, 健康, 病院, 医学, 診断, 衛生兵, メディケア

診断制度の分析では、「偽陽性(本当は無病なのに、疾患があると診断してしまう)」や「偽陰性(本当は疾患があるのに、無病だと診断してしまう)」の割合を調査し、本当に疾患があるか・ないかをきちんと判断できる割合を、AIと人間とで比較しました。すると、AIが87%、人間の意志は86.4%の診断制度であり、ほぼ横並びであることがわかりました。

医師が不足していても、ディープラーニングが補えるかもしれない

このように、AIと人間とを直接系統的に分析した文献は今回が初めてです。過去の研究では、低所得地域で人々がアクセスできる医療専門家のレベルよりも、AIのレベルのほうが高い(頼るのに適している)というものもありました(Zhang L. et al., 2018)。今回の研究をもとに更に画像診断技術が熟練していくことで、これまで精密な画像診断が行えていなかった環境でも、高精度の診断ツールを取り入れることができるようになるかもしれません。

カウンセリング, アドバイス, セラピスト, シルエット, チャット, チェック, 顧問弁護士, カウンセラー

なにより、医療現場の時間不足に対し、AIが有用であるという強力な証拠が登場したといえます。単に人間と並べて活用できるとは限らない技術ですが、AIで時間短縮を行うことで、人間でしか行えない作業のクオリティを高めるという未来に、一歩近づいたように思えます。

また、メンタルヘルスの分野でも、患者さんの顔色やデータなど、ある程度定量化できるデータに基づいた診断を行います。こうした技術に対しても、AI技術の発展が寄与してくれることを願うばかりです。

引用

Xiaoxuan L. et al. (2019). A comparison of deep learning performance against health-care professionals in detecting diseases from medical imaging: a systematic review and meta-analysis. The Lancet Digital Health.

Zhang L. et al. (2018).Big data and medical research in China. BMJ.