歩き方から認知症を見分けられるという世界初の研究
認知症にはアルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症というように、原因によって複数の種類があります。この種類によって、症状や有効な治療法が異なります。
ニューカッスル大学の研究者らは世界で初めて、アルツハイマー型・レビー小体型の認知症を、歩行パターンから見分けられることを示しました。
歩行のステップと長さが認知症によって異なる
特にアルツハイマー型認知症は、睡眠不足によってリスクが高まることがわかっており、現代で見過ごすことのできない疾患となっています。
この疾患の見極めが重要であるにもかかわらず、現在の診断は脳スキャンや様々な症状の識別など種別が多く、実施ハードルが高い問題があります。そこでニューカッスル大学の研究では、
・認知症ではない高齢者29名
・レビー小体型認知症患者45名
の計110名に対する歩行の分析を行い、歩行パターンから病気の種別を見極める試みを行ないました。
参加者は数千個のセンサーが設置された通路に沿って移動し、通常の速度で歩くよう求められます。センサーはこの歩いている人たちの足跡を捉えて、足跡の移動パターンから歩行パターンを明らかにしました。
分析の結果、レビー小体型認知症の人は、アルツハイマー型認知症の人と比べて、下記のような傾向がみられました。
・歩数が不規則で転倒リスクが高い
・ステップの時間や歩幅が左右非対称で、左右の足跡が別の軌跡を描いている
診断ツールとしての「歩行」の未来
研究者は、これらの両方を分析すれば、すべての認知症の種類を60%の精度で特定できることを明らかにしました。
すなわち、歩行パターンは認知症の診断ツール(スクリーニング)としてかなり有効であることが示されました。
アルツハイマー病学会の研究部長であるジェームズ・ピケット博士は「この先駆的な研究は、英国だけでも認知症として生活する85万人の人々に、かけがえのない支援を提供するきっかけになる。こうした有望な研究を、支援し続けることが重要です」と語りました。
アルツハイマー病協会によると、英国の認知症患者は2025年までに100万人を超えると推定されています。
超高齢化社会・日本での展望が望まれる
言うまでもなく、日本は超高齢化社会です。認知症は高齢化に伴って生じる疾患であり、日本では460万人もの人々が認知症を抱えて暮らしているといわれています。
こうした人々により効率的なケアを提供するためにも、今回紹介したような最新研究が、いち早く実用化されることが望まれます。
引用
MedicalXpress: "For the first time walking patterns identify specific types of dementia"
※注:2019.09.20現在、この記事の内容はAlzheimer's & Dementia誌で校閲中のデータであり、論文の引用は不十分です